話題の「マンジャロ」はダイエットの特効薬か?知っておくべきリスク

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2025-09-17

近年、2型糖尿病治療薬として登場した「マンジャロ」が、その高い体重減少効果から「ダイエット薬」として注目を集めています。SNSなどで耳にする機会も増え、「簡単に痩せられる夢の薬」と誤解されている方も少なくありません。
しかし、接骨院経営者の皆さまは、患者さまからこうした情報について尋ねられた際、正確な知識をもって対応することが求められます。今回は、マンジャロの作用メカニズムと、ダイエット目的での使用に潜む危険性について詳しく解説します。

〇マンジャロとは?そのメカニズム
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、2023年4月に日本で承認された2型糖尿病治療薬です。この薬は、GLP-1受容体作動薬とGIP受容体作動薬という、二つの異なるホルモンの働きを模倣する「デュアルアゴニスト」という新しいタイプの薬剤です。具体的には、食後に分泌されるこれらのホルモンの働きを活性化させることで、以下の作用を発揮します。

血糖値の改善:血糖値が高い時にインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる。
食欲の抑制:胃の内容物の排出を遅らせることで満腹感を持続させ、食欲を抑える。
体重減少:食欲抑制とエネルギー消費の改善により、大幅な体重減少を促す。

特に、その体重減少効果が非常に高いことから、ダイエット目的での使用に期待が寄せられています。

〇なぜ承認外使用が起こるのか?
マンジャロは、厚生労働省が承認した2型糖尿病の治療薬です。これは、薬の有効性と安全性が、特定の疾患に対して科学的に確認されたことを意味します。にもかかわらず、なぜダイエット目的での使用が見られるのでしょうか。

背景には、肥満に悩む人々の「すぐに痩せたい」という強いニーズがあります。マンジャロの臨床試験で示された顕著な体重減少効果が、SNSなどを通じて「夢のダイエット薬」として広まってしまったことが一因です。医師の中には、自由診療という形で、適応外(承認された病気以外)の肥満治療にマンジャロを使用するケースが存在するのも現状です。しかし、これは保険適用外となり、高額な費用がかかるだけでなく、薬の安全性や効果に関するデータが不足しているため、リスクを伴います。また、個人輸入などで医師の管理なく使用することは、さらに危険性が高まります。

〇ダイエット目的での使用に潜む危険性
マンジャロのダイエット目的での使用には、いくつか危険性が潜んでいます。
糖尿病ではない方が使用した場合、重篤な低血糖を引き起こす可能性があり、吐き気、嘔吐、下痢、便秘といった消化器症状が頻繁に現れることがあります。まれではありますが、膵炎や胆嚢炎などの重篤な副作用のリスクも指摘されています。

マンジャロは、専門医の診断と処方、そして厳重な血糖値などのモニタリングが不可欠な薬剤です。医師の管理下を離れた自己判断での使用は、予期せぬ重篤な健康被害に繋がりかねません。薬剤の使用を中止した場合、体重が元に戻る、あるいはそれ以上に増加する「リバウンド」のリスクも考えられます。薬だけに頼り、根本的な生活習慣の改善を伴わないダイエットは、持続的な効果を得ることが難しいのが現実です。また、保険適用外での使用は、非常に高額な自己負担が発生します。

〇接骨院として患者さまに伝えたいこと
接骨院に来院される患者さまの中には、体重管理に悩みを抱え、「痩せたい」という思いから安易な方法を検討してしまう方もいらっしゃるかもしれません。そうした患者さまに対し、接骨院の先生方は正しい情報とアドバイスを提供することが重要です。
まず、マンジャロは厚生労働省が承認した糖尿病治療薬であり、ダイエット薬ではないことを明確に伝えましょう。次に、持続可能なダイエットは、バランスの取れた食事と適度な運動といった、根本的な生活習慣の改善が不可欠であることを強調しましょう。もし過度な肥満で悩んでいる患者さまがいれば、安易な薬に頼る前に、専門医の診断を受け、適切な治療や指導を受けるよう促しましょう。

接骨院は、運動指導や食事のアドバイスを通じて、患者さまが健康的に体重を管理し、健康寿命を延伸するサポートができる重要な存在です。患者さま一人ひとりに寄り添い、地に足の着いた健康管理を促していきましょう。