
「感染性胃腸炎」という言葉は、突然の腹痛や嘔吐、下痢といった症状とともに、私たちの生活を脅かす身近な病気です。特に冬から春にかけて流行するノロウイルスやロタウイルス、そして秋口から流行するRSウイルスなど、様々なウイルスが原因となります。
接骨院経営者の皆様は、患者様やご家族の体調不良に備え、これらのウイルス性胃腸炎に関する正しい知識を持つことが非常に重要です。今回は、感染性胃腸炎の主な症状と、ウイルスごとの特徴、そして感染予防法について解説します。
〇感染性胃腸炎の主な症状
感染性胃腸炎は、細菌やウイルスが原因で胃や腸に炎症が起こる病気です。主な症状には、突然のお腹の痛み、水っぽい便が出る下痢、何度も繰り返す吐き気や嘔吐、そして38℃程度の発熱などが挙げられます。これらの症状は、ウイルスや細菌の種類、感染した人の年齢や体調によって程度は異なりますが、特に乳幼児や高齢者は重症化しやすいため注意が必要です。
感染経路は、主に接触感染と経口感染です。感染者の便や嘔吐物に触れた手で口に触れること、ウイルスが付着した物を触った後、十分に手洗いせずに食事をすることなどが原因となります。また、ノロウイルスのように、ウイルスが飛び散った飛沫を吸い込むことでも感染する飛沫感染にも注意が必要です。
〇ノロ、ロタ、RSウイルスの違い
感染性胃腸炎の原因の多くはウイルスです。中でも、特に流行が見られる代表的なウイルスの違いを理解しておきましょう。
ノロウイルスは、冬の時期に大流行することが多く、食中毒の原因としても知られています。感染力が非常に強く、少量のウイルスでも感染が成立するため、注意が必要です。主な症状は、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱で、激しい症状が1〜2日続いた後、比較的早く回復するのが特徴です。
ロタウイルスは、乳幼児に多いウイルス性胃腸炎の原因ウイルスです。冬から春にかけて流行し、白い便や酸っぱい臭いのする便が出るのが特徴です。激しい嘔吐や下痢、発熱が数日続き、重症化すると脱水症状を引き起こすこともあります。
RSウイルスは、秋口から冬にかけて流行するウイルス性胃腸炎の原因ウイルスです。乳幼児に多く、感染すると、鼻水や咳、発熱などの上気道炎や、下気道炎(気管支炎、肺炎)を引き起こすこともあります。
〇感染予防と注意すべき点
感染性胃腸炎の予防には、手洗いの徹底として、流水と石鹸で、指の間や爪の間まで丁寧に洗い流しましょう。感染者の嘔吐物や便を処理した後は、塩素系漂白剤などで調理器具や床を消毒しましょう。これらのウイルスは、アルコールや逆性石鹸では効果が低いため、次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒剤を使用する必要があります。嘔吐や下痢が続くと脱水症状に陥りやすくなるため、経口補水液などで、こまめな水分補給を心がけましょう。また、感染者のいる場所では、マスクを着用し、できるだけ接触を避けましょう。
〇地域医療における接骨院の貢献
接骨院は、地域の方々が集まる場所だからこそ、先生方ご自身と患者様を守るための徹底した感染対策が不可欠です。もし、先生ご自身が感染性胃腸炎に感染してしまうと、患者様の施術ができなくなり、院の運営に大きな支障をきたします。日頃から手洗いを徹底し、十分な睡眠と栄養を摂るなど、体調管理に努めましょう。
また、院内での感染を防ぐためには、施術環境の衛生管理も極めて重要です。患者様が触れるベッドや機材は、一人ひとりの施術後に必ず次亜塩素酸ナトリウムなどを用いて消毒することを習慣づけてください。特に、手に触れる機会の多いドアノブや待合室の椅子、受付の筆記用具などもこまめに消毒することが大切です。
接骨院は、患者様が安心して施術を受けられる環境を整えることで、地域の感染症予防に貢献できます。先生方ご自身の健康を守り、院内での感染対策を徹底していきましょう。