
令和8年(2026年)3月27日(金)、全国都市会館にて「第34回柔道整復療養費検討専門委員会」および「第37回あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」が開催されました。
今回も私は実際に会場に足を運び、議論の行方を一言一句聞き漏らさぬよう傍聴してまいりました。
今回の委員会は、令和8年度の療養費改定に向けた基本的な考え方(案)の最終取りまとめに向けた議論が行われました。
現時点ではこれらはあくまで案であり、決定したものはまだ何もありませんが、示された方向性は先生方の実務に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当日会場にいたからこそお伝えできる現場の空気感を含め、柔整・あはきの順にご報告いたします。
まずは柔道整復の議論についてご報告します。
今回の委員会では、算定基準の引き上げ検討案とともに、それにかかわる適正化の強化が明確に打ち出されました。
初めに明細書についてですが、これまで通り原則毎回発行を前提として、明細書発行体制加算を毎回算定とする方向で議論が進んでいます。ただし、患者からの要望で月に一回発行する場合は算定も月に一回という形になります。
また柔整療養費の料金は医科等と異なり算定項目が細分化されておらず、施術料等の項目だけではどの部位に対する施術の請求であるかが判別できないため、明細書等への負傷名(又は施術部位)の記載を義務づけることが検討されています。
さらに実務に直結する変更案として、初検料の算定回数の制限が挙げられます。これまでは全ての部位が治癒した後の再負傷については、同一月であっても複数回の初検料算定が可能でしたが、これを制限する方向で議論が進んでいます。加えて「無病」として初検料のみを算定することについても、算定を認めないといった意見が出ています。
一方で罨法については、いわゆる待機期間を見直すためのエビデンス(医学的な安全性・有効性)を収集し、期間による制限を解消する方向で検討されています。日数によって冷罨法しかできない、あるいは温罨法しかできないといった現行の考え方ではなく、本来患者ごとに適切に判断されるべきものですので、必要な検討であると考えています。
また、若手の早期開業を支援する目的で、管理者の実務経験期間を現行の3年から2年に短縮する案も引き続き検討されました。これは養成施設での臨床実習が大幅に拡充された実績を考慮したものであり、これからの業界を担う先生方には追い風となる可能性があります。
最後に現在患者ごとの償還払いの対象となっている自己施術ならびに自家施術については、明確に療養費の支給対象外とする方針で議論が進んでいます。
次にはり・きゅう、あん摩マッサージ指圧の議論についてです。
こちらでは不適切ビジネスへの制裁案と、あっせん問題への踏み込んだ指摘がなされました。
前回、東京都後期高齢者医療広域連合の委員から、ある請求団体が同意書をオンライン診療で書いてくれる医師を施術所に紹介(あっせん)している実態があるという極めて深刻な指摘がなされました。
これを受け、オンライン診療による同意書の交付は認められない旨を通知等に明記する方向で話が固まりつつあります。
また介護施設と施術所が結託した高頻度施術に対し、保険者側から厳しい指摘がありました。
これに関連し、施設へのキックバックである紹介料を背景とした受療など、ビジネス目的の不適切な事例について、患者の紹介を受ける際はいかなる金銭のやり取りも認めないというルールの強化が検討されています。
算定基準については、はり・きゅうの初検料やマッサージ施術料についても物価高騰分の上乗せ案が示されていますが、施設と施術所の経営が一体となっている等の実態を踏まえ、施術所が特定の施設に入居している患者に対して独占的に施術を行っている場合(特に訪問施術料3)については、なんらかの制限措置が検討されそうです。
事務負担の軽減を目的とした包括料金制への移行についても議論が継続されましたが、保険者側は現場の納得感を重視しつつ、安易な粗療に繋がらない慎重な設定を求めているのが印象的で、こちらについては次回改定に向けての継続課題となりそうです。
最後に、柔整同様にあはきでも自己施術ならびに自家施術については、明確に療養費の支給対象外とする方針で議論が進んでいます。
今回も両委員会を傍聴して私が強く感じたのは、厚生労働省および保険者側によるデータに基づいた不正抽出のシステム化が着々と進んでいるということです。
部位転がしや高頻度な往療といったパターンは、今や保険者のシステム上で自動的にフラグが立つ時代になりつつあります。これは、真面目に地域医療を支えている先生方にとっても、これまで以上に重い説明責任が伴うことを意味します。
会員の先生方には、現時点から以下の2点を特に意識していただくことをお勧めします。
まずは、医学的必然性の明文化です。
なぜその部位に、その日から施術が必要なのか。
治癒と負傷を繰り返す場合は特に、その経過を施術録に詳細に記録してください。
次に、医師との適切な連携です。
医師の同意を単なる形式にせず、治療報告書等を通じて密なコミュニケーションを図ることが、不適切なあっせんの疑いから身を守ることにも繋がります。
これらはあくまで現時点での案であり、今後の委員会等を経て最終決定されます。
改定の具体的な細則が判明し次第、アトラ請求サービスでは迅速に情報を分析し、先生方が不当な不利益を被ることのないよう全力でサポートを続けてまいります。共にこの大きな変革期を乗り越えていきましょう。