窓口負担金の適正な徴収方法とは?

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2023-06-01

近年、会員の皆様から「療養費をより適切に扱っていきたいが、何から取り組むべきか」といった非常に前向きなご相談をいただくケースが増えてきました。
その際に私からは、「まずは領収書を適正に、しっかりと毎回発行できる体制が取れているか確認しましょう」とお伝えしています。

領収書をきちんと発行できる体制があれば、当然明細書も問題なく発行ができますので、適正な療養費の取り扱いに大きく近づきます。
今回は領収書を適正に発行するために知っておくべき知識、柔道整復・鍼灸の窓口負担金の違い、自費施術との併用した場合の考え方について解説します。

鍼灸院や接骨院の窓口負担金は、基本的には過不足のない料金をいただくことがルールとなっています。
したがって算定基準に該当しない追加料金または割引等を行うことはできません。


【 柔道整復の場合 】

「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について(第8 一部負担金)に定められている内容は以下の通りです。

1 「柔道整復師の施術に係る療養費について」により、 受領委任の取扱いとすることが認められている施術所において、
患者から支払いを受けることとされている一部負担金に相当する金額は健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律等の規定に基づき、施術に要した費用に10分の1、10分の2又は10分の3を乗じた額であること。

2 施術所の窓口での事務の負担軽減を考慮し、患者が一部負担金を支払う場合の 10円未満の金額については、四捨五入の取扱いとすること。
また、施術所の窓口においては 10 円未満の四捨五入を行う旨の掲示を行うことにより、被保険者等との間に混乱のないようにすること。
なお、保険者又は市町村(特別区を含む。)が支給する療養費又は医療費の額は 10円未満の四捨五入を行わない額であることから、
患者に交付する領収証や明細書に記載された一部負担金の合計額と、柔道整復施術療養費支給申請書に記載された一部負担金の額が異なる場合があること。


【 はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の場合 】

「はり、きゅう及びあん摩・マッサージの施術に係る療養費の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について」に以下のように回答されています。

(問47)施術管理者が患者等から支払を受ける一部負担金の金額は、どのように計算するか。

(答)施術に要した費用に患者の一部負担金の割合(1割・2割・3割)を乗じる(1円単位で計算)。
なお、1円未満の金額は、四捨五入の取扱いとすること。
また、施術所の窓口において、一部負担金の徴収方法に関する掲示(1円未満の金額は四捨五入を行い、1円単位で計算する旨)を行うことにより、患者等との間で混乱が生じないようにする。

医療機関・接骨院(柔道整復)の窓口会計では1円単位は四捨五入され 10円単位で計算されます。
一方、はり、きゅう及びあん摩マッサージでは1円単位で窓口会計を行います。

受領委任の取扱規定(第3章保険施術の取扱い 療養費の算定、一部負担金の受領等)において、「患者から支払いを受ける一部負担金については、これを減免又は超過して徴収しないこと」と規定されています。
そのため、窓口負担金は多くもらっても少なくもらってもいけません。

まれに「うちは一律の窓口料金を設定しているため、衛生材料費、検査料と言う名目で料金を上乗せして徴収している」等のお話しを聞くことがありますが、これは基本的に認められません。
施術料金は、部位数、施術回数、施術内容、電療の有無等により、算定基準で細かく金額が決められていますので、その都度、行った施術に対する負担金を正しくいただくことが重要となります。

一方、自費施術のみの場合は一律料金の設定が可能です。衛生材料費やその他消耗品等についても一律料金として徴収することができます。

医療機関では、保険診療と自由診療を同時に行うことが禁止されています(混合診療の禁止)。
そのため、施術所においても同様に保険施術と自費施術の併用はできないのではないかとお考えの方もいますが、柔道整復やはりきゅう等は「診療」ではなく「施術」であり、
医療機関における混合診療の禁止には該当しませんので、保険施術と自費施術の併用については問題ありません。

しかし、注意すべきポイントがあります。それは、保険施術を行った傷病と同一傷病に対して追加で施術を行う場合です。

例えば、柔道整復で腰部捻挫に対する保険施術を行った場合、同一部位にさらに特別な施術等を追加で行ったとしても、算定基準で定められた一部負担金しか徴収してはいけません。
これは、窓口負担金は算定基準に準じ、減免又は超過して徴収してはいけない、という原則に基づきます。
保険施術を行った傷病に対してではなく、別傷病への自費施術の場合は、保険施術と自費施術の併用は可能です(例:保険→腰部捻挫or腰痛症、自費→肩部の施術)。

また、柔道整復の保険施術を行った同一部位に対して、はりきゅうの保険施術を適用させることも可能です。
この時の考え方として、外傷性が明らかな負傷(柔整の保険適用傷病)に対するはりきゅう施術ではなく、疼痛を主症とする慢性疾患(はりきゅうの保険適用傷病)に対する施術、という認識となります。
ただしこの場合、保険者から同一傷病ではないかと疑義を持たれる可能性がありますので、別の傷病であることをしっかりと施術録に記載しておきましょう。

結論として、窓口でいただく費用は「保険施術の窓口負担金」と「自費施術料金」を合計したもの、ということになります。
この場合の「自費施術料金」は、あらかじめ施術所にて設定している自費施術料金を患者の負担金等によって金額を変えずにそのままいただくものと考えてください。
繰り返しになりますが、「うちは一律の窓口料金を設定している」については認められません。

今回のお話しは、内容が煩雑に感じられたかもしれません。
しかし、領収書を適正に発行するためには必要な知識となりますので、是非理解して適切な保険請求業務に役立てていただければと思います。