足病医学は世界では古くから確立された専門分野ですが、日本ではまだあまり知られていません。足病医には「ポドロジスト」と「ポディアトリスト」の2種類があり、それぞれの役割や資格が異なります。長い歴史の中で、足に関する知識や治療法はどのように発展してきたのでしょうか?
〇足の悩み、実は昔から?
足に関するケアは、残存している壁画などから古代より行われていたと考えられています。足の怪我や病気の治療に、薬草や香料、石膏などが使用されていたり、神罰と考えられ儀式や祈祷が行われたりすることもあったようです。古代ローマ時代では、軍隊の行軍中に足のトラブルが多発したことから、足に関する治療法が発展しました。
〇ポドロジー/ポドロジスト
実際に、「足病学」が確立し始めたのは19世紀頃のドイツを発祥としているとされています。ヨーロッパでは古くから靴文化が根付いており、足のトラブルを抱える人が多く、必然的にフットケアの必要性が高かったと言われています。1900年代初頭には、フットケアは民間療法として各地に広がり始め、理論や技術が体系化され始めます。1930年頃、ドイツ語で「足の手入れ」を意味する「Fusspflege(フスフレーゲ)」という足のケア専門の職業が確立され、その専門家は「Fusspfleger(フスフレーガー)」と呼ばれるようになります。
1900年代後半になると、フットケアに関する知識や技術が体系化され、一つの専門分野として確立されるにつれて、ドイツ語で「足学」を意味する「Podologie(ポドロジー)」という名称が定着していき、2002年にドイツで国家資格を有する職業となり、その技術者が「Podologie(ポドロジスト)」と呼ばれるようになりました。
ポドロジストは、足の皮膚や爪のケア、足のマッサージ、オーダーメイドインソール作成等、幅広いケアを提供する専門職ですが、医師ではありません。また、国や地域によっては民間資格の場合もあり、資格の要件は異なります。
〇ポダイアトリー/ポディアトリスト
ポドロジーが、ドイツで発祥し、ヨーロッパを中心に広がったのに対し、ポダイアトリーはアメリカで発展しました。ポドロジストの知識を基に発展し、医療的な側面を強化した比較的新しい職業と言えます。
1895年:、ニューヨークに最初の足病医学の学校が設立され、独立した医療分野として確立され、足病医学の医師が誕生しました。アメリカの足病医学は、「Podiatry(ポダイアトリー)」呼ばれ、「Podiatrist(ポディアトリスト)」と呼ばれる専門医が幅広い診療を行うことができるようになりました。
1900年代になると、医学の発展とともに、より専門的な分野へと発展しました。X線やMRI等の導入、抗生物質の開発などにより、足の疾患の診断と治療が大きく進歩しました。現在では、糖尿病患者の足のケア、スポーツ外傷、高齢者の足の健康など、幅広い分野で重要な役割を果たしています。
イギリスやオーストラリア等でも、足病医(学)はポダイアトリー/ポディアトリストと呼ばれますが、アメリカと違い、医師資格ではありません。
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〇柔道整復と足病学の連携が期待
海外の足病学は、古代から現代まで長い歴史を持ち、医学の進歩とともに発展してきました。今回はドイツ・アメリカの足病医学を中心にご紹介しましたが、独自に足病医学が発展している国もあると思います。
日本の足病医学は、西洋医学が導入された明治時代以降、ヨーロッパの足病医学の影響を受けていると考えられます。実際、日本の整形外科の考え方や治療法・足病医の立ち位置は、ドイツに近しい部分があると感じます。その足病医学に、柔道整復師のような伝統的な手技療法を取り入れることで、より患者さんに寄り添った治療が可能になります。海外の長い歴史を持つ足病学の知見と、日本の伝統的な手技療法を融合させることで、日本の足病学はさらなる発展が期待できます。