「幹細胞」の多様な源泉を知る!

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2026-03-18

近年、「再生医療」という言葉を耳にすることが増え、その中心にある「幹細胞」への注目が高まっています。しかし、「幹細胞」と一言で言っても、実はその採取源によってさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴や期待される効果を持っていることをご存知でしょうか?

〇幹細胞とは?再生医療の基礎
幹細胞とは、私たち人間の体を構成するさまざまな細胞(皮膚、骨、神経、筋肉など)に変化する能力(多分化能)と、自分と同じ細胞を増やす能力(自己複製能)を併せ持つ、特別な細胞です。この特性を活かし、損傷した組織や臓器の修復・再生を目指すのが再生医療です。
再生医療に用いられる幹細胞にはいくつかの種類がありますが、特に注目されているのが、成人や出生後の組織から採取できる「体性幹細胞」です。その中でも、臨床応用が進んでいる主な由来について解説します。

〇歯髄由来幹細胞
歯髄由来幹細胞は、乳歯や親知らずなど、抜けた歯の内部にある歯髄(歯の神経)から採取される幹細胞です。他の組織由来の幹細胞に比べて増殖能力が非常に高く、短期間で大量の細胞を培養できるという特徴を持っています。また、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、筋肉細胞、そして神経細胞など、多様な細胞への分化能力も確認されています。
特に、神経細胞への分化能力が高いため、脊髄損傷やパーキンソン病、アルツハイマー病といった神経系疾患の再生医療に応用が期待されています。乳歯から採取されるものは、細胞が若いため、高い活性を保っている点も大きな利点です。

〇脂肪由来幹細胞
脂肪由来幹細胞は、体内の脂肪組織から採取される幹細胞です。脂肪吸引によって比較的容易に大量の幹細胞を採取できるため、患者さまへの身体的な負担が少ないという特徴があります。脂肪由来幹細胞は、骨細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、血管内皮細胞、脂肪細胞などに分化できる能力を持っています。
この幹細胞は、損傷した組織の修復や炎症の抑制に有用とされ、変形性関節症による軟骨の再生や、脳血管障害、糖尿病などの治療に関する研究が進められています。自身の脂肪組織から採取する場合、拒絶反応や重篤な副作用のリスクが低いと考えられており、整形外科分野や美容医療の分野での活用も進んでいます。

〇臍帯由来幹細胞
臍帯由来幹細胞は、出産時に採取されるへその緒(臍帯)から得られる幹細胞です。新生児由来であるため、細胞の老化が少なく、分裂能力や再生能力が非常に高いという特徴を持っています。また、免疫原性が低い(拒絶反応が起こりにくい)ため、他者への移植にも適しているとされています。
臍帯由来幹細胞は、豊富な成長因子やサイトカインを含んでおり、組織修復作用、免疫抑制作用、炎症鎮静作用などが期待できます。特に、脳梗塞の後遺症改善、脊髄損傷の後遺症改善、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病などの神経障害の改善への期待が高まっています。

〇骨髄由来幹細胞
骨髄由来幹細胞は、骨の中心部にある骨髄から採取される幹細胞です。幹細胞の研究の中でも最も歴史が古く、長年の研究実績と多くの臨床報告があるのが特徴です。骨、軟骨、筋肉、脂肪などへの多分化能に加え、特に神経細胞への分化能力が高いとされています。
骨髄由来幹細胞は、損傷した神経組織の修復や再生を促進する能力が高く、脳卒中や脊髄損傷といった神経再生医療において注目される細胞です。また、免疫調節能力や高い抗炎症作用も持つため、自己免疫疾患や慢性炎症性疾患の治療にも有効であると考えられています。採取には医師の技術と経験が必要となりますが、その高い再生能力は依然として重要な幹細胞の一つです。

〇患者さまの「健やかさ」を支えるために
幹細胞を用いた再生医療は、まだ研究段階にあるものや、公的医療保険が適用されない自由診療のものがほとんどです。しかし、それぞれの幹細胞の種類と由来によって特性が異なり、さまざまな疾患への応用が期待されていることを理解することは、未来の医療を見据える上で不可欠です。
患者さまの健康寿命を延伸し、豊かな生活をサポートするために、常に最新の医療情報にアンテナを張り、学びを深めていきましょう。