
令和8年度の療養費改定について、厚生労働省よりついに正式な通知が発出されました。
これに伴い、確定した改定内容と、今後の実務における極めて重要なチェックポイントについて皆様に共有いたします。
今回の改定は、物価高騰に対応した歴史的な料金の引き上げが行われる一方で、不適切請求に対する非常に厳しい適正化のルールがセットで導入されています。表面的な数字だけでなく、国からの明確なメッセージを読み解く必要があります。
まず、柔道整復療養費の改定内容から見ていきましょう。
全体の施行時期は令和8年7月1日となります。
料金項目としては、初検料が10円引き上げられて1回当たり1,560円になります。
ただし算定ルールが厳格化され、他部位での施術を含めて施術継続中である場合や、施術の終了または中止から3か月が経過していない場合には初検料を算定できなくなります。その代わり、施術の終了または中止から1か月以上3か月以内に行われた施術については、再検料を算定する扱いへと整理されました。
その再検料については、10円引き上げられて1回当たり420円となり、連続する2回の施術について算定できるようになります。また、初検料のみを算定して、他の療養費の請求や自費施術を組み合わせるような請求手法は認められない旨も明文化されました。
施術料金については、施療料が10円引き上げられて1回当たり770円に、後療料は45円引き上げられて1回当たり550円となります。ここで実務上最大の変更点となるのが、2部位目の施術について80%で算定する逓減制が導入されるという点です。多部位請求に対する適正化の波が、より具体的な料金ルールとなって現れています。
罨法料については、温罨法料が5円引き上げられて1回当たり80円となる一方、冷罨法料は5円引き下げられて1回当たり80円となり、料金が同一化されました。これは温罨法料と冷罨法料の料金を同一化する見直しであり、今後の制度運用の簡素化も見据えたものと考えられます。また、電療料については13円引き上げられ、1回当たり46円となります。なお、温罨法料、冷罨法料、電療料についても、2部位目は80%の逓減対象となります。
明細書の発行推進についても見直しが入りました。
現行の「明細書発行体制加算」の名称が「明細書発行加算」へと見直され、明細書を発行した場合には1回当たり10円の加算が毎回算定できるようになります。一部負担金等の支払を受けるごとの交付が原則ですが、患者の求めに応じて1か月単位でまとめて交付することも引き続き認められます。
ただし、患者の求めを起点としていることを確認するための書面等による措置が講じられます。
さらに、明細書に負傷名または施術した部位を記載する欄が新設され、これに伴い保険者による患者照会の手法についても所要の整備が行われます。明細書を出さないことは管理施術者に対する指導の対象となるため、非常に大きなリスクを伴います。
その他、自分自身への自己施術に加え、家族や関連施術所の開設者、従業員に対する「自家施術」も明確に療養費の支給対象外とされました。その他の重要なチェックポイントとして、患者ごとの償還払いへの変更事例について解説します。
今回、対象に「直近1年間に通算8か月以上かつ通算9部位以上の施術を受けている患者」が追加されました。
この1年間のカウント方法について、今回は令和8年1月を起点として12月までの1年間とし、該当者は令和9年1月から償還払いの対象となる可能性があることが確定しました。すでに半年が経過しているため、今この時点でのチェックと適切な運用への是正が不可欠です。これは0か100かではなく、保険者が総合的に判断し、ヒアリング等の裏取りを行った上で償還払い変更通知を出す仕組みとなっています。
また、正当な理由なく請求を遅らせることが認められない旨も新たに明文化されました。
意図的、あるいは管理不足により1年や2年もの間請求を留保し、一気に提出するような初回請求は、審査の段階で厳しく問題視されることになります。
今回の改定の本質は、目先の料金の増減に一喜一憂することではありません。外傷性が明らかな負傷は制度に基づいて療養費をきちんと活用しつつも、療養費だけに固執するのではなく、患者の別の悩みやニーズには自費でしっかりと応えていく。そうして本質的に地域にしっかりと根を生やす経営を行う施術所しか、今後は生き残れないでしょう。
今回は議論のテーブルに載ったものの、実装されなかった「積み残し項目」がいくつかあり、2年後の改定ではさらに大鉈が振るわれる可能性があります。柔整療養費は外傷性が明らかな負傷が対象であり、一度来院した患者を保険で囲い込み続ける場所ではない、という国からのメッセージを忘れてはなりません。
続いて、あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費の改定についてです。
あはきに関して、実務上、最も注意すべき事実として、新レセプト様式や逓減措置を含めた「すべての項目が令和8年7月1日から一斉施行」されることに決定しました。当初議論されていたような段階的な後ろ倒し案は一転して却下され、猶予は一切ありません。急ピッチで用紙等の準備を進める必要があります。
具体的な内容として、マッサージの施術料は1局所470円、変形徒手矯正術は470円加算に引き上げられ、月16回以降の長期施術については一律50%逓減となります。はり・きゅうも初検料が1術2,000円、2術2,320円、施術料は1術1,650円、2術1,820円に増額され、月16回以降は50%逓減となります。
そして訪問施術制度には、非常に強力なメスが入りました。同一日・同一建物の人数に応じた訪問施術料4(10人以上19人以下)と訪問施術料5(20人以上)が新設されますが、実務上のチェックポイントは新設された「集中率」のペナルティ措置(施設減算)です。訪問施術料の算定回数のうち、同一の施設や建物において行われる割合(回数ベース)が90%以上を占める施術所は、その施設における一連の訪問施術料金のすべてが100分の80(2割減額)に減額されます。
保険者対応を意識して訪問施術料を算定せず通所(通常の施術料)として算定していても、この集中率の計算回数に含まれるため、一切逃げられません。自社で運営する老人保健施設などと契約してそこばかりを施術しているようなビジネスモデルは、非常に大きな打撃を受けることになります。
さらに経済上の利益提供の禁止も厳格化され、施術所が他の事業者、医療機関、医師、ケアマネジャー等に対し、患者紹介の見返りとして金品や物品だけでなく、便益、労務、饗応(接待、飲食等によるもてなしなど)を提供することも療養費の支給対象外となります。施術所と訪問先施設との「特別な関係」の定義も細かく明文化されました。
開設者や代表者が同一である場合はもちろん、代表者の親族関係(妻が訪問マッサージ院、夫が老健を経営など)、役員の30%以上が親族である場合、さらにフランチャイズ契約や経営コンサルタント委託など、人事や資金の関係を通じて経営方針に重要な影響を与える関係にある場合も特別な関係とみなされます。コンサル料という名目で紹介料を支払うような行為も完全に防がれています。自己施術・自家施術も支給対象外となります。
新設される明細書発行加算(10円)についても、明細書は原則毎回発行となります。月1回まとめて交付することも認められますが、その場合は通所の患者からは専用の書式で意思表示の署名をもらう必要があります。
ただし、訪問施術に関しては料金の徴収がもともと月に1回という考え方であるため、この患者の意向確認書面(署名)は不要となる方向で整理されています。
なお、マッサージの包括料金制への移行については、安易な粗療につながらないよう慎重な設定を求める声が強く、今回は次回改定に向けての継続課題となりました。
アトラ請求サービスでは、7月1日の一斉施行を受けて、皆様が新しいルールにスムーズに対応し、大切な免許や施術所の信用を守りながら運営を続けていただけるよう、レセコンのシステム対応を含めて全力で伴走してまいります。
ご不明な点や実務へのお困りごとがございましたら、いつでも私どもにご相談ください。
共にこの大きな時代の転換期を乗り越えていきましょう。