2021年8月6日開催、第18回柔道整復療養費検討専門委員会の解説コラムをアップしました。

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2021-09-01

アトラ請求サービス会員の皆様へ、9月分の会報が公開されましたので、A-COMSのお知らせよりご覧ください。

下記、会報の一部をご紹介します。

2021年8月6日(金)に「第18回柔道整復療養費検討専門委員会」が開催されました。今回は新型コロナウイルス感染拡大防止への配慮から、オンラインと対面を組み合わせた形での開催となりましたが、本委員会での議論は今後の柔整業界にかかわる、非常に重要な内容となっています。今回はこちらの最新情報についてお伝えしていきます。

今回も過去と同様に、座長の遠藤久夫氏をはじめ「有識者」、「保険者等の意見を反映する者」、「施術者の意見を反映する者」の3者と、厚生労働省(事務局)側で行われました。まず事務局である厚生労働省から、過去の議論の整理が行われ、その上で今回の検討事項として示されたのは下記の3つとなります。

①明細書の義務化について
②不適切な患者の償還払いについて
③療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み

それぞれの検討事項について解説していきます。

①明細書の義務化について
現状では、患者から施術に要する費用に係る明細書の発行を求められた場合にのみ、明細書を交付することとされています。施術に要する費用に係る明細書を患者に手交することは、業界の健全な発展のためにも必要であることから、今回、明細書発行の義務化が提案されています。なお、実施に当たっては、施術所の事務負担軽減に最大限配慮することとされています。

こちらは過去の本委員会において度々議論となっていた「患者が施術・請求内容を確認する取組み」を解決する案となります。これまでは毎回申請書の裏面に署名することや、継続患者に対して前月の申請書の写しを渡すなどの議論があり、現時点で解決に至っていませんが、事務局である厚生労働省としては明細書発行を義務化することで解決を図りたいのではないかと思われます。

先行して本取り組みを実施しているはりきゅう、あん摩マッサージの例もありますので、義務化自体については避けようがないものとなるでしょう。実施にあたっては領収書兼明細書というように、金額の記載がある明細書を発行した場合には領収書を兼ねることができるという仕組みや、患者から不要の申し出があった場合は発行の必要はないなどの一定の考慮はなされそうです。


②不適切な患者の償還払いについて
現状では、不正が「明らか」な患者及び不正の「疑い」が強い患者であっても、引き続き受領委任払いとされています。これに対して、問題のある患者については、保険者において、受領委任払いではなく、償還払いしか認めないようにする権限を与えるべきとの意見があり、問題のある患者を特定する仕組みや事後的に償還払いとする場合の取扱いなど、事務的に検討すべき点が今後の検討課題とされていました。

今回、今後の対応方針として、不適切な患者の償還払いについては、不正が「明らか」な患者に加え、不正の「疑い」が強い患者も対象とすることが示されています。ただし、真に不適切な患者に対象を絞る観点から、「償還払いとする範囲」、「償還払いとするプロセス」について年末までに検討することとなっています。

不正が「明らか」な患者の例としては
・自己施術を行ったことがある者(自己施術は療養費の支給対象外)

不正が「疑われる」患者の例としては
・いわゆる自家施術(従業員や家族が、関連する施術所の患者となった場合など)
・複数の施術所において、同部位の施術を重複して受けている患者
・保険者が繰り返し患者照会を送付しても回答しない患者
・施術が、非常に長期にわたり、かつ、非常に頻度が高い患者

とされており、現状は不正な施術に対しては療養費の支給はされませんが、次回以降の施術も受領委任払いとなっていることが問題視されています。こちらもはりきゅう、あん摩マッサージでは2021年7月より先行して取り組みが実施されていますので、何らかの制限がかかることは間違いないと思われます。

療養費について、法律上(健康保険法第87条)は「保険者は、療養の給付等を行うことが困難であると認めるとき、又は保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて療養費を支給することができる」とされており、保険者には裁量が認められているという大前提があります。しかし柔道整復やはりきゅう、あん摩マッサージの実際の療養費運用においては、国の定めた算定基準に従って支給申請や支給決定が行われており、保険者による裁量権の濫用は認められません。

疼痛を主症とする慢性疾患やその症状が支給対象であるはりきゅう、あん摩マッサージと違い、柔道整復では外傷性が明らかな負傷が支給対象となります。不正が「疑われる」患者として例に上がっている「施術が、非常に長期にわたり、かつ、非常に頻度が高い患者」を柔道整復でどのような線引きにするかは非常に難しい部分であり、真に施術を必要としている患者とって重要な部分です。保険者ごとに基準が大きく変わらないような仕組みが必要となるでしょう。


③療養費を施術管理者へ確実に支払うための仕組みについて
現状として、復委任団体の中に悪質な団体の存在があることが認識されています。実際に本来、施術管理者に支払われるべき療養費を、団体の運営者が私的流用して破産し、療養費が施術管理者に支払われないといった事例がありました。現状の課題を踏まえ、療養費を施術管理者に確実に支払うため、不正防止や事務の効率化・合理化の観点から、公的な関与の下に請求・審査・支払いが行われる仕組み、併せて、オンライン請求、オンライン資格確認につながる仕組みとできないかが検討されています。

この「公的な関与の下に請求・審査・支払いが行われる仕組み」について、具体的な例として医科における社会保険診療報酬支払基金等が審査・支払いを行う、というような案も検討されています。そうなれば復委任団体の代表等の口座では無く、各施術管理者の個人口座に療養費が振込まれるようになり、悪質な団体による不正を防止できるという考え方です。ただし、そうなった場合は医科のように社会保険診療報酬支払基金等に権限が集中し、実質的に保険者が直接支給決定にかかわることが難しくなるため、一部保険者は慎重な姿勢を取ることになるでしょう。

また、これらは令和4年6月(次期療養費改定)までに方向性を定め、令和6年度中の施行を目指すこととされていますが、上記に加えて保険者における事務処理の増加や振込手数料の負担増、施術者側における入金管理の手間の増大など、実際の問題は山積みであり、とても数年で出来ることとは思えません。そもそも復委任自体は何十年も前から継続して行われていることであり、今回の問題は悪質な団体の運営者が起こした一個人の資質の問題であると考えます。いずれにせよ信頼のおける団体を選択することが最も重要になります。

アトラ請求サービスでは会員の皆様の療養費は預り金として別管理の上、上場企業として監査法人による外部審査を経て、適時適切に開示を行っておりますのでどうぞご安心ください。

情報を制する者は経営を制する、正しい情報を掴んで施術所の運営に活かしていきましょう。